日時:2013年1月26日(土)13:30〜15:30

場所:焼肉屋いちなん3階
   京都市左京区一乗寺北大丸町51

ゲスト:竹内 潔(たけうち きよし)さん
    (富山大学)

参加者:7名

=====

アフリカの熱帯森林帯には、狩猟採集によって生活するさまざまな民族集団が住んでいます。その人々は、身長が低いことから、俗に「ピグミー」とよばれてきました。

今回は、そのような集団の一つで「アカ」とよばれる人々(アフリカ中央部(コンゴ共和国)に住む)を話題にします。

彼らは、15〜30人ほどのキャンプで生活していますが、そのようなキャンプには、リーダーが存在せず、メンバーは平等です。

その人々は、合計100種類以上の野生動物を食物としますが、それらの動物をだれでもいつでも食べるわけではなく、食物とするにもかかわらず、彼らが「食べない」動物とみなすものが多く含まれています。

(森に住む野生哺乳類約50種のうち、食物とみなされない動物は、ガラゴとモグラの2種のみ)

ここで、アカの人々の伝承から、彼らの「動物観」をみてみると、彼らは、アカの祖先たちのうち、さまざまな不道徳をはたらいた者が動物になった、つまり、森の動物たちはすべて昔のアカの子孫だ、と考えます。したがって、彼らにとって、動物は「人格的存在」だといえます。

そして、そのような動物を食べると、その動物の形や行動の特徴が、自分や自分の子どもに乗り移る、と考えます。

たとえば、ガラゴを食べると、自分の子どもの目がガラゴのように大きくなる、と考え、ゆえに食べない、という選択をしているようです。つまり、形や行動になにか「異常性」を感じる動物を、あえて食食べないのです。これは、他の動物についても同じです。

一方、この「摂食回避」の度合いは、人々の年齢によって変わり、子どもから青年、成人、老人と年齢が高くなるにつれて、回避が弱まって、何でも食べるようになります。

アカの人々は、乳児や幼児を「独立した完全な人間」とはみなさず、両親を乳幼児はつながっていて、両親のおこないが乳幼児に影響をおよぼす、と考えるので、小さい子をもつ親は、「異常性」のある動物を食べません。

たとえば、ジャコウネコ(斑点があるので、親が食べると子が発疹をおこす)、コウモリ(親が食べると子の顔がコウモリのようになる)など。

また、アカの社会では、女性のほうが男性よりも弱いとされるため、「男の動物」とされる動物を食べることを、女性は避けます。たとえば、アフリカシベット、ジャコウネコ、マングース、ヒョウ、チンパンジー、アカスイギュウ、カバなど。

一方、回避の対象とならない動物もいます。

ブルーダイカー、ピーダーズダイカー、フサオヤマアラシ、カワイノシシ、オオハナジログエノン、アフリカマルミミゾウの6種類で、これらは狩猟でよく獲れる動物です。

アカの人々は、狩猟でよく獲れる動物を、タブーからはずしているのですが、その理由はおそらく、よく獲れる動物=ありふれた動物で、異常性を感じないからではないか、と思われます。

アカの人々の摂食回避は、基本的に個人個人の感覚に依拠しており、多くの人または全員が食べない動物を食べても、それに対する制裁や非難はなく、あくまでも「個人タブー」というレベルの行動です。

さきほど触れたように、年齢が高くなると摂食回避が弱まりますが、これは、ある年齢以上になると、自分の子が乳幼児であることが少なくなることが反映されています。

アカの人々は、自分が今、人生のどの段階、どの状態にあるかを認識して、自分が食べない動物を選択しているといえます。

以上は、1980年代から20年以上にわたって行われた研究によってわかったことですが、

ごく最近では、アカの人々が住む地域も、森林伐採が行われ、環境が大きく変化しており、伐採基地に住む若者たちのあいだでは、摂食回避の傾向が弱まっているという調査結果(2010年)もあります。

今後、どうなっていくのでしょうか?

=====