コヨーテという動物をご存じでしょうか?


(写真:Jim Peaco - NPS Photo )

北アメリカ大陸に住むイヌ科動物で、オオカミに少し似ています。
学名を Canis latrans といいます。

このコヨーテに関して、最近、Nature に興味深い記事が出ました。
Sharon Levy, Rise of the coyote: The new top dog,  Nature 485, 296-297 (17 May 2012)
http://www.nature.com/news/rise-of-the-coyote-the-new-top-dog-1.10635

以下に内容を紹介します。

コヨーテは、北アメリカ大陸に土着の動物で、先住民のあいだには、この動物にまつわるたくさんの神話や物語が伝承されています。

ヨーロッパ人入植者たちは、先住民とは異なり、この土地に土着の動物たちを攻撃し、オオカミは絶滅寸前まで減りました。

しかし、コヨーテは、人間の攻撃を生き延び、繁栄してきました。

実際、1700年以前には、コヨーテは大陸の中西部平原だけに生息していましたが、その後、生息範囲を広げて、現在では、北アメリカ大陸のほぼ全土に生息し、都市部にもみられるようになりました。

つまり、人間が増えて自然に手を加え、あるいは動物を直接攻撃するようになると、多くの動物は減ってしまうのですが、コヨーテは、そのような条件下で、逆に増えてきたのです。

では、なぜそのようなことが起こっているのでしょうか?

アメリカの研究者らの最近の研究によると、コヨーテは適応力が非常に高く、人間が起こした環境の変化を利用してきました。

過去200年のあいだに、人間(開拓者)がオオカミを追いやった後に、コヨーテは、オオカミがかつて住んでいた土地に住み着いて、オオカミがエサとしていた動物をエサとして生きることができました。オオカミよりも繁殖速度が速く、多様なエサを利用できるので、有利だったでしょう。

さらに、北アメリカ大陸の北東部、つまり、昔はコヨーテが住んでいなかった土地のコヨーテは、中西部のコヨーテより身体が大きいことが知られていますが、

最近の遺伝学的調査によると、北東部のコヨーテは、五大湖付近のハイイロオオカミCanis lupus の遺伝子をもっていることがわかりました。

つまり、西から東へ、コヨーテが勢力拡大していく途上で、オオカミと交雑し、雑種を形成してきたということです。オオカミは数が減っていて、同種の配偶者をみつけるのが困難であったため、コヨーテと交雑したのではないかと、考えられます。

そして、身体が大きくなったコヨーテは、大きなエサ動物を倒すことができるので、いっそう有利になったのでしょう。実際、北東部のコヨーテは、南西部のコヨーテの5倍の速さで生息地を広げているそうです。

現在では、ニューヨーク市やワシントンD.C.などの大都市部で、人間が住む場所の近くでもコヨーテがみられるようになっています。これに関しては、YouTubeなどに多くの映像があります。

さらに、最近では、イヌ Canis familialis との雑種も知られています。

結局、オオカミよりも適応力が高く、なんでも食べて、どんな環境でも生きられる、いわば「いいかげんな」コヨーテが、生き延びてきたといえるわけですが、

生態学的には、オオカミの遺伝子をもつ大きなコヨーテが、北アメリカ大陸の絶滅危惧種のカリブーなどにとって脅威となる危険や、雑種になったことによって行動や生態が変化する可能性が指摘されています。

一方で、大きなコヨーテは、増えすぎたシカを減らすために役立つのではないか、という見方もあるようです。

いずれにしても、コヨーテは、人間の圧力によって他の動物が減ったときに増えたという、貴重な例であり、これによって、北アメリカ大陸の生態系がかなり変化することが予想されます。

(AM)