日時:2011年9月17日(土)15:00〜17:30(18:00〜 懇親会)
場所:焼肉屋いちなん3階

ゲスト:ヨンさま、こと黒鳥英俊(くろとり ひでとし)さん(恩賜上野動物園、京都大学大学院理学研究科)
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参加者:9名

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オランウータンは、以前は一つの種と考えられていましたが、現在では、

スマトラオランウータンと
ボルネオオランウータン

の2種からなるとされています。

現在、スマトラ島北部(インドネシア)とボルネオ島(インドネシア、マレーシア)だけに住んでいます。(かつては大陸にも生息した)

名前は、よく知られているとおり、マレー語の「森の人」に由来し、
その名のとおり、森(東南アジア熱帯雨林)に住み、樹上で生活します。

熱帯雨林の上の方の高い所で生活しているため、人間が観察することが困難で(東南アジアの熱帯雨林は、林冠(森林の最上部分)が地上数10メートルにも達する)、

地上近くで暮らすアフリカの類人猿(ゴリラ、チンパンジーなど)ほど研究がすすんでいないようです。

群れは作らず、主に単独で暮らします。

しかし、動物園では、オランウータンはおなじみの動物です。
日本では現在、21の動物園で52頭が飼育されているとのこと。

ゲストの黒鳥さんは、東京都の多摩動物園でオランウータンの飼育を担当したことがあり、

そのときに「スカイウォーク」という設備を作りました。

これは、多摩の森のなかに何本もの高い鉄塔を立てて、その間をロープでつなぎ、オランウータンがそれを伝って高い所を移動して、獣舎から森に行けるようにしたものです。

最近の動物園では一般的になった、「生態展示」の一種です。

一方、野生のオランウータンの生息地であるボルネオ島では、アブラヤシのプランテーションを作るために森林が急速に伐採され、オランウータンの住処が分断されています。

アブラヤシの油脂は、ご存じの方も多いと思いますが、さまざまな食品や家庭用品(「植物性」洗剤など)に大量に使われています。

このまま森林が減少すると、オランウータンは50年後には絶滅するという試算があり、

この情況を少しでも改善するために、分断された森をつないで、オランウータンの移動を助け、行動範囲を広げる試みがなされています。黒鳥さんも、このプロジェクトに参加しています。

具体的には、川をはさんだ森と森の間に吊り橋をかけて、そこをオランウータンが渡って移動できるようにしているのです。(オランウータンは水に入るのがニガテだそうで、自分では川を渡れない)

この橋を作るのに、消防署で不要になった廃品の消防ホースを使うのだそうです。(丈夫で安全、水に強い、費用がかからない)

最近では、実際にこの橋を渡っているオランウータンが観察されているようです。

さて、動物園に戻ると、野生状態ではおそらく見ることのできない、さまざまな行動が発揮されることがあります。

多摩動物園にいたモリーというオランウータンは、絵を描くことで有名になりました。クレヨンで毎日描いていたそうです。
個展が開かれたこともあるので、覚えていらっしゃる方も多いでしょう。なかなかきれいな絵です。

シャツを着るのが好きなオランウータンもいるそうです。

このような行動を見ると、彼らはほとんど人間なのではないか、という気がしてきますが、しかし、彼らが人間になることはけっしてないわけで、

黒鳥さんのことばを借りれば、彼らを「人間にしてはいけない」のでしょう。このことばには、じつは深い意味があると思います。

余談ですが、動物園の類人猿たちは、飼育係の人間に対して好みがあるそうで、雄のサルたちは体格のよい男性飼育係を嫌い(たぶんライバル意識か?)、雌のサルたちは男性飼育係が女性と一緒にいると、やきもちを焼くそうです。細身の黒鳥さんは、サルたちに好かれるタイプとのこと。
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この日、台風の影響で天候が悪く、開始時間直前には豪雨になり、参加者のみなさまが会場に到着できないのではないかと心配しましたが、6名の方々が集まってくださいました。

途中、停電による中断が何度かありましたが、なんとか無事に終えることができました。

みなさま、ありがとうございました。

また、懇親会には3名の方が参加してくださり、ゲストとわれわれ世話人を含めて6人で、楽しい時間を過ごすことができました。

天候が悪かったので、「お月見」はかないませんでしたが、おいしい焼肉を堪能することができました。参加者のみなさん、そしていちなんさん、ありがとうございました。

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こんな焼肉は初めてでした。ごちそうさまでした。
(AM)