シーボルト (Philipp Franz Balthazar von Siebold , 1796-1866 )とは、19世紀に長崎の出島のオランダ商館医として滞在していたドイツ人の医師・博物学者です。
『日本動物誌』(Fauna Japonica)は、日本に滞在した1823ー29年の間にシーボルトが採集した膨大な標本などをもとに、後年、作成され刊行された書物で、これによって日本の動物が初めてヨーロッパに広く紹介されました。
なぜこんな話をするかというと、この貴重な資料が、京都大学理学部動物学教室に所蔵されていることを、つい最近知ったからです。
しかも、この本がフランス語で書かれていることを初めて知りました。
わたしはこの本の存在は知っていましたが、シーボルトがドイツ人なので、この本はドイツ語で書かれているものと、漠然と思っていました。
しかし、実物をみると、たしかに、明解なフランス語で書かれています。
考えてみれば、これは不思議なことではなく、当時(19世紀)はフランス語が国際語、外交用語として広く使われていたので、それを踏襲しているのですね。
この本は、日本でも動物学者には知られていて、図版はよく参照されるようです。
しかし、フランス語で書かれているために、文章(つまり説明)の部分は日本であまり読まれていないようなので、ちょっと残念な気がします。
ちなみに、『日本動物誌』は、
鳥類、魚類、甲殻類、哺乳類、爬虫類の巻からなる大著です。
わたしは一部を読んだだけですが、観察された動物が当時の動物分類学の最新知識とともにくわしく記述されているので、当時の日本の動物を知るうえで貴重なだけでなく、当時の世界の動物学を知るうえでも貴重な資料のように思います。
動物だけでなく、『日本植物誌』(Flora Japonica)もあります。
ご興味のある方は、京都大学、電子図書館ホームページから映像で全巻を見ることができますので、ごらんください。
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/b05/b05cont.html
ゆかりの地、長崎には、「シーボルト記念館」があります。
いままで、それほどシーボルトに興味はなかったのですが、この書物をきっかけに、いろいろ調べてみたくなりました。
たまに、歴史に思いを巡らすのも、楽しいですね。(AM)