報告:第6回「生物時計の話」(2011年10月29日)

日時:2011年10月29日(土)13:30 ~ 15:30

場所:焼肉屋いちなん 3階 
   京都市左京区一乗寺北大丸町51

ゲスト:沼田英治(ぬまた ひではる)さん
   (京都大学大学院理学研究科 )

参加者:5名

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今回のゲスト、沼田さんは、昆虫の季節適応の研究がご専門で、とくに光周性について研究してこられました。

光周性とは、生物が日長に反応する性質。
たとえば、沼田さんが研究していらしたホソヘリカメムシという昆虫では、日長が約13時間以下のときは成虫は休眠し、14時間になると100%の個体が休眠から覚めて繁殖を行います。

では、昆虫はなぜ日の長さがわかるのでしょうか?
それは、生物が「時計」をもっているからです。

これが「生物時計」で、いろいろな種類がありますが、最も一般的なのが

「概日リズム」(circadian rythm)といわれるものです。

これは、約24時間の周期をもつ生理的なリズムで、

明暗のない恒常条件下では自律的にこの周期(自由継続周期)をくり返しますが(自律振動性)、
明暗のサイクルなどの環境からの信号(同調因子)に同調します。
自由継続周期は、温度の影響をあまり受けません。

そのほかには、「概年リズム」(約1年の周期)や、「概潮汐リズム」(干満の周期)をもつ生物がいます。

さて、概日リズムにもどると、

キイロショウジョウバエという、遺伝子の研究に使われる昆虫で、分子レベルでのメカニズムが解明されています。

また、沼田さんらの実験で、さきほどのホソヘリカメムシでは、生物時計が故障すると季節感を失うことがわかりました。

人間にもこの概日リズムが存在します。

体温や運動能力、計算能力などが、昼は高く夜は低いことが知られ、
この傾向は徹夜をしてもほぼ維持されるようです。

明暗の変化などの環境の変化から隔離し、食事をつねに目前に置いて食事時間がわからないようにした「隔離実験」を行った結果、

人間にも「自由継続周期」が存在し、それは24時間よりも少し長いことがわかりました。

この「時計」は、波長の短い(青)強い光によって同調して、24時間に合わせています。
つまり、朝起きて強い光にあたることによって、時計をすすめて時刻を合わせているのです。

別の言い方をすれば、もし強い光にあたらないと、24時間より長い周期のままで、時計の時刻と体内のリズムがどんどんずれていくことになります。

人間の概日時計は、脳の「視交叉上核」という部位にあるとされ、
網膜で感じた光で時刻を合わせます。

飛行機で短時間で長距離を移動した場合の「時差ぼけ」は、体内のリズムと時刻の同調がうまく行われない結果、起こる現象です。
かつて、長距離を長時間かけて移動していたときには起こらなかった、「現代病」といえます。

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参加者からは、「自由継続周期(生物がもともと備えているメカニズム)などなくて、すべて環境に合わせて変動するほうがよいのではないか?」という質問が出されましたが、

沼田さんの答えは、「その2つのことを対立したものと考えること自体が理解できない。メカニズムがあるからこそ「合わせる」ことができるので、対立項として考えることは無意味だ」というものでした。

これは、現在の生物学の考え方では当たり前の答えなのですが、意外と知られていないのかな、という印象をもちました。

簡単にいえば、動物の行動のしくみ、ですが、このあたりの議論は、機会があったらぜひ取り上げたいと思います。

それに、生物の身体は、いろいろなしくみが絡み合って機能するものですから、「時計」だけを取り去って、他のしくみは元のまま、という状態は考えにくいです。別の言い方をすれば、外観も機能も同じだけれど時計だけが欠けている人間、というものは想像できません。

実際、「時計」の調節がうまくいかない人はいるそうですが、時計がない「時計欠損症」というような病気は知られていません。

沼田さんの見解では、時計の遺伝子または同じ染色体上のある遺伝子が致死遺伝子であって、時計が正常に発現しないような遺伝子型になる場合には、その個体は生まれてこないのではないか、ということでした。(ただし、これはあくまでも推測です)

(AM)












第6回「生物時計の話」(2011年10月29日)

第6回の予定がきまりました。

みなさま、お誘い合わせのうえ、ご参加ください。

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「生物時計の話」

日時:2011年10月29日(土)13:30 ~ 15:30
場所:焼肉屋いちなん3階
   京都市左京区一乗寺北大丸町51
   http://ichinan.com/?p=35#more-35

ゲスト:沼田英治(ぬまた ひではる)さん(京都大学大学院理学研究科)

参加費:無料 (寄付歓迎)

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報告:第5回「動物園のオランウータンから現地の保全へ」


日時:2011年9月17日(土)15:00〜17:30(18:00〜 懇親会)
場所:焼肉屋いちなん3階

ゲスト:ヨンさま、こと黒鳥英俊(くろとり ひでとし)さん(恩賜上野動物園、京都大学大学院理学研究科)
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参加者:9名

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オランウータンは、以前は一つの種と考えられていましたが、現在では、

スマトラオランウータンと
ボルネオオランウータン

の2種からなるとされています。

現在、スマトラ島北部(インドネシア)とボルネオ島(インドネシア、マレーシア)だけに住んでいます。(かつては大陸にも生息した)

名前は、よく知られているとおり、マレー語の「森の人」に由来し、
その名のとおり、森(東南アジア熱帯雨林)に住み、樹上で生活します。

熱帯雨林の上の方の高い所で生活しているため、人間が観察することが困難で(東南アジアの熱帯雨林は、林冠(森林の最上部分)が地上数10メートルにも達する)、

地上近くで暮らすアフリカの類人猿(ゴリラ、チンパンジーなど)ほど研究がすすんでいないようです。

群れは作らず、主に単独で暮らします。

しかし、動物園では、オランウータンはおなじみの動物です。
日本では現在、21の動物園で52頭が飼育されているとのこと。

ゲストの黒鳥さんは、東京都の多摩動物園でオランウータンの飼育を担当したことがあり、

そのときに「スカイウォーク」という設備を作りました。

これは、多摩の森のなかに何本もの高い鉄塔を立てて、その間をロープでつなぎ、オランウータンがそれを伝って高い所を移動して、獣舎から森に行けるようにしたものです。

最近の動物園では一般的になった、「生態展示」の一種です。

一方、野生のオランウータンの生息地であるボルネオ島では、アブラヤシのプランテーションを作るために森林が急速に伐採され、オランウータンの住処が分断されています。

アブラヤシの油脂は、ご存じの方も多いと思いますが、さまざまな食品や家庭用品(「植物性」洗剤など)に大量に使われています。

このまま森林が減少すると、オランウータンは50年後には絶滅するという試算があり、

この情況を少しでも改善するために、分断された森をつないで、オランウータンの移動を助け、行動範囲を広げる試みがなされています。黒鳥さんも、このプロジェクトに参加しています。

具体的には、川をはさんだ森と森の間に吊り橋をかけて、そこをオランウータンが渡って移動できるようにしているのです。(オランウータンは水に入るのがニガテだそうで、自分では川を渡れない)

この橋を作るのに、消防署で不要になった廃品の消防ホースを使うのだそうです。(丈夫で安全、水に強い、費用がかからない)

最近では、実際にこの橋を渡っているオランウータンが観察されているようです。

さて、動物園に戻ると、野生状態ではおそらく見ることのできない、さまざまな行動が発揮されることがあります。

多摩動物園にいたモリーというオランウータンは、絵を描くことで有名になりました。クレヨンで毎日描いていたそうです。
個展が開かれたこともあるので、覚えていらっしゃる方も多いでしょう。なかなかきれいな絵です。

シャツを着るのが好きなオランウータンもいるそうです。

このような行動を見ると、彼らはほとんど人間なのではないか、という気がしてきますが、しかし、彼らが人間になることはけっしてないわけで、

黒鳥さんのことばを借りれば、彼らを「人間にしてはいけない」のでしょう。このことばには、じつは深い意味があると思います。

余談ですが、動物園の類人猿たちは、飼育係の人間に対して好みがあるそうで、雄のサルたちは体格のよい男性飼育係を嫌い(たぶんライバル意識か?)、雌のサルたちは男性飼育係が女性と一緒にいると、やきもちを焼くそうです。細身の黒鳥さんは、サルたちに好かれるタイプとのこと。
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この日、台風の影響で天候が悪く、開始時間直前には豪雨になり、参加者のみなさまが会場に到着できないのではないかと心配しましたが、6名の方々が集まってくださいました。

途中、停電による中断が何度かありましたが、なんとか無事に終えることができました。

みなさま、ありがとうございました。

また、懇親会には3名の方が参加してくださり、ゲストとわれわれ世話人を含めて6人で、楽しい時間を過ごすことができました。

天候が悪かったので、「お月見」はかないませんでしたが、おいしい焼肉を堪能することができました。参加者のみなさん、そしていちなんさん、ありがとうございました。

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こんな焼肉は初めてでした。ごちそうさまでした。
(AM)








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